立石寺を発った芭蕉は、大石田へたどり着き最上川の姿を目の当たりにします。大石田で開いた句会では挨拶句として「五月雨をあつめて涼し最上川」と詠んでいます。大石田からは新庄に向かい、そこで2泊。元禄2年6月1日(陽暦1689年7月17日)に大石田を発った芭蕉は、最上川を舟で下るため舟運を中継地点である「本合海」へ。梅雨明け前後で水量豊富な最上川を庄内藩の関所があった清川まで一気に下ります。この際の印象をも含めて「おくのほそ道」掲載の句ができあがります。
五月雨をあつめて早し最上川芭蕉
芭蕉が歩いた道のりに、森村誠一&おくのほそ道再生委員会が光を当て、現代、そして未来に残したい名勝地を‘名蕉地’と名付け、ベスト100景をセレクトしました。

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ガイド紹介

佐藤 晃 (船頭)さん
山形県酒田市出身。船頭になって8年。最上川の四季と共に暮らす毎日です。
全国のみなさん、俺のガイド聞きに来てけろなー
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大石田、新庄を経て、五月雨を集める最上川へ
吹雪になった最上川の舟下り。とはいえ船内は快適そのもの
5月28日(陽暦7月14日)に立石寺を出発した芭蕉は、大石田へと向かいました。芭蕉を招いたのは船問屋を営む高野一栄。彼の家に3泊し、29日、30日と句会を催した芭蕉は、「五月雨をあつめて涼し最上川」と詠んでいます。
6月1日(陽暦7月17日)には大石田を発ち新庄城下へ。俳人・渋谷風流宅を宿とし連句を興行しました。6月3日、晴天のもと新庄を出立し、本合海(もとあいかい)にたどり着きます。本合海で船に乗った芭蕉は古口まで行き、ここで船を乗り換え清川で上陸しました。
この川下りで、水量豊かに流れる急流最上川を体感した芭蕉。挨拶句であった上記の句を「おくのほそ道」では、「五月雨をあつめて早し最上川」とし、その本質を詠み込みました。
雪景色のなか柳の清水を訪ねる
新庄
柳の清水跡にて。昨夜来の雪で一面真っ白に
芭蕉がこの地で詠んだ「水の奥~」の句碑
尾花沢訪問を終え、最上川下りを2009年3月11日に控えて新庄に宿泊した森村誠一師匠と一行。最上総合支庁長・正木徹氏、新庄市長・山尾順紀氏、尾花沢市長・小野紀男氏、徳良会理事長・鈴木宗世氏、梅津保一氏といった方々をお招きして交歓会を開きました。「おくのほそ道」を日本のロマンチック街道に、という森村師匠のスケールの大きな構想に、みなさん大いに触発されたようで、談論風発の夜となりました。
夜半より吹雪となり、翌朝は一面の雪景色。降りしきる雪の中の出発です。新庄市教育委員会の三浦和枝さんに同行いただき、最初に訪ねたのは「柳の清水跡」。羽州街道を新庄へと向かった芭蕉は、城下を間近にここで湧き出る清水を飲んで一息ついたのではと推察されています。昭和初期まで豊かな清水の湧いていた場所を発掘整備して新庄市指定史跡となっていますが、折からの雪に残念ながら埋もれていました。傍らには芭蕉の「水の奥氷室尋る柳かな」を刻んだ句碑が。新庄で世話になった俳人・渋谷風流宅にて詠んだ挨拶句です。
急流最上川がうねり方向を変える
本合海
本合海を望む最上川の左岸にて
右手に鳥居、その対岸が八向山の断崖。中腹には祠が
本合海の芭蕉乗船の地。かつて義経もこの地に上陸したとか
降り止む気配のない雪の中を一行は本合海へと向かいました。
本合海は南から流れてきた最上川が西へと大きく曲がり、そこへ東から流れてきた新田川が合流する地点。最上と庄内間に陸路がなかった当時、舟運の中継地点として栄えました。また、平泉へ落ち延びる義経が、最上川をさかのぼり上陸した地点とも言われており、芭蕉の興趣を誘ったことでしょう。
国道47号線を進むと視界が開け、左手に本合海地区の家並み、前方に最上川が見えてきます。右にカーブしながら最上川にかかる本合海大橋へと至るバスの右手車窓には、西へと大きく流れを変える最上川のスケール大きな景観が広がります。いったん最上川左岸へと降り立った一行。手前岸にある鳥居のちょうど対岸は、八向山(やむきやま)が最上川の激流に削りとられた断崖。中腹に矢向神社(やむきじんじゃ)の祠が見えます。雪の残る急斜面と鈍色の空を映しとうとうと流れる最上川。その独特の景色に、一行は言葉もなく眺め入りました。
その後、最上川右岸にある「芭蕉乗船の地」をたずねた一行、いよいよ古口からの舟下りへと向かいました。
雪に煙るモノクロームの世界を堪能
最上川
いよいよ川下りの船に乗船。吹雪は最高潮に
こたつの並ぶ船内にくつろぐ一行。冬ならではの楽しみだ
赤い鳥居の向こうが、「おくのほそ道」に書かれた白糸の滝
取材時、北日本には大型の低気圧が来襲しており、風雪は強さを増すばかり。「最上川芭蕉ライン舟下り」の乗船場「戸澤藩船番所」と命名された施設に着く頃には、すさまじい吹雪の様相に。雪まみれになりながら船に乗り込みました。船は前後左右と屋根がガラス張りで船内にこたつが並ぶこたつ舟。こたつへ入り、人心地つく頃に出航。川の流れは少々荒いようですが、不安を感じることもなく舟は川面を行きます。
本合海から乗船所のある古口までは両岸に田畑や集落の見える穏やかな風景ですが、古口から下船場所である清川までは一転、両岸から山が迫ります。雪に煙る山々と最上川が描き出す景色は、まさに一幅の水墨画。数々の沢や滝が景観に変化をもたらし、見る者を飽きさせません。船頭さんの舟唄もあいまって、船内に穏やかな空気が漂います。右手にモノクロの世界にひときわ目立つ小さな朱色の鳥居が目に入り、その奥には「白糸の滝」が。舟が左手へ舵を切り始めました。正面には降船所「最上川リバーポート」の建物が見えてきました。

森村誠一(もりむら せいいち)
1933年埼玉県熊谷市生まれ。青山学院大学卒業後、10年間のホテルマン生活を経て作家活動に入る。『高層の死角』(第15回江戸川乱歩賞受賞)、『腐蝕の構造』(第26回日本推理作家協会賞受賞)、『人間の証明』(第3回角川小説賞受賞)『悪魔の飽食』『コールガール』など数多くのベストセラー作品を著し、本格派推理小説の世界で不動の地位を築く。作家活動40周年にあたる2003年には、第7回日本ミステリー文学大賞を受賞した。
近年は、新たな表現として“写真俳句”の創作、普及にも力を注いでいる。
公式HPアドレス http://www.morimuraseiichi.com/
森村誠一写真俳句館 http://www1.tategaki.jp/morimura/















